支援措置
DV等から逃げている被害者にとって、居場所を突き止められることは、致命的なリスクとなります。そのリスクを軽減するための公的な施策に、加害者等に対し住民票や戸籍の附票等の閲覧や交付を制限する『住民基本台帳事務における支援措置』があります。
制度の概要は総務省のサイトをご覧ください。https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/dv_shien.html
支援措置を受けるためには、住民票のある自治体に対して申し出をします。私の場合は、DV相談を証明する書面を警察でもらって手続きしました。警察以外にも、配偶者暴力相談支援センターなどで証明を受けることもできるようですが、私が住んでいる所では、支援措置については、市役所と警察との連携が出来上がっており、実務上は配偶者暴力相談支援センターは実質無関係だそうです。(一方で、地方裁判所に申し立てる保護命令については、裁判所と配偶者暴力相談支援センターとの連携が出来上がっており、警察は実質無関係でした。)
支援措置対象者になると、証明書の交付などに際して多少の制約があります。
たとえ委任状があっても、本人以外の代理人が住民票などの交付を請求することは出来ません。
交付請求の際に提示する本人確認書類として何を使用するのかを、予め市との間で取り決めておく必要があります。
交付請求できる場所は市役所本庁に限定され、出張所や市民サービスコーナーなどでは請求出来ません。郵送やコンビニ交付も利用出来ません。
マイナポータルで閲覧できる情報に一部制限がかかります。
支援措置申出の際には、こういった内容についての取り決めも交わし、取り決め事項を申出人が確認・承諾した、という趣旨の書面に記名・押印します。
申し出から1週間足らずで、“必要性が認められるため支援措置を決定した”という旨の通知が届きました。
支援措置の期間は1年間です。1年経過後も継続するためには、期限が切れる前に延長の申出をする必要があります。
支援措置延長の申出
私は、1年間の期間の延長を毎年繰り返して、今も支援措置を継続させています。
期間が終了する1ヶ月前から、延長の手続きをすることが出来ます。
私が住んでいる所では、1度目の延長と2度目の延長のときは、どちらも期限まで残り1ヶ月を切った頃に、市役所の市民課から連絡がありましたが、3度目の延長のときは、残り2週間を切っても音沙汰がなかったので、連絡を待たずに市役所へ手続きをしに行きました。いずれ連絡をくれる予定にはなっていて、連絡のタイミングがたまたま遅れていただけなのか、最初の1~2年のうちは連絡をくれるけど、何回も更新をくりかえしている人にはいちいち連絡はしないのか、それとも単純に忘れられていたのか・・・?真相は分かりませんが、次回からは市のほうからは連絡はもうもらえないつもりで、期限切れにならないように自分で充分気を付けなければいけませんね。
延長のために特別何か求められる要件というのはありません。 現に支援措置を受けている状況であれば、すでに初回の申出の際に警察から証明をもらっているので、それを根拠に延長を希望することが出来ます。
あらためて自分で警察署へ出向く必要はなく、延長の申出書に記入して提出すれば、後は市役所のほうで警察と確認のやり取りをしてくれています。
延長の申出が認められるたび、毎回再度取り決めを交わす必要があります。
戸籍届書の記載事項証明書についての申入れ
戸籍関連の証明書のなかに、市役所などで発行してもらう戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)や戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)とは別に、法務局で発行してもらう『戸籍届書の記載事項証明書』という、婚姻・離婚・出生・死亡といった戸籍上の届出についての証明書があって、届出人の連絡先(住所や電話番号)も掲載されるもののようです。
住所が関係する戸籍関連書類でも、『戸籍の附票』については住民票と同様に住民基本台帳事務における支援措置で制限がかかっていますが、この『戸籍届書の記載事項証明書』については、支援措置対象者だからといって閲覧や交付が制限されるわけではありません。
母子で引越し・支援措置対象となる→調停離婚成立→調停申立人の私が役所に離婚届を提出、という段階で、初めてそのことを知りました。
住所のある市役所に離婚届を提出しに行ったのですが、万が一離婚届記載事項の閲覧請求などがあった場合、住所や、いつどこに離婚届を出したかなどがばれるリスクがあって危ないので、閲覧請求があっても住所などを開示しないようにする手続きをしたほうがいい、ということを教えてくれました。
「本籍地でやってもらえるはずですが、本庁でしか出来ない手続きなのか、管轄の出張所でも受け付けてもらえるのかはこちらでは分からないので、問い合わせてみますね」、ということで、その場で管轄の出張所に電話をかけてくれました。その結果、出張所で手続き出来るという確認が取れました。
本籍の市役所の出張所へ行き、目的を伝えても、最初に話をした職員には話しがまったく通じませんでした。「はいはい、支援措置ね。しておいた方がいいですよ。」みたいな感じで、支援措置の申し出に来たものと思い込まれ、話しがかみ合いません。その人から別の何人かの職員に話しが行った結果、すべて理解できている職員の方が即座に状況を飲み込んで、それ以後の対応をやってくれました。
弁護士や支援団体等に丸投げせずにすべて自分で動いている場合はとくに、容易に目に付く情報ではないと思います。役所の職員にとってもあまり経験しない手続きではないかと思うので、万一見落とされても自分で気が付けるよう、注意が必要です。
支援措置対象者が証明書を取得しに行くと…
住民票の写しは、必ず市役所本庁に、本人が行き、予め取り決められている本人確認書類を使用すれば、あとは通常の申請用紙を使って通常の方法で申請できます。
支援措置対象になってから初めて住民票の写しを取得しに行ったときは、カウンターの向こう側ではどうやら大騒ぎになっていた様子で、後から来た人たちが次々と受け取りを終えて帰って行くなか、私は住民票の写しを1枚発行してもらうだけのことに、30分くらい待たされたと記憶しています。
こんなことは、この最初の1回のみで、その後は通常通りにスムーズに発行されています。
戸籍謄本の取得のために、住民登録をしている市ではなく、本籍地の市役所に行ったときは、初めからスムーズに発行されました。「支援措置対象になってますよね?」とひと言確認されただけです。本籍の市の本庁に行かずとも、本籍地の住所を管轄する出張所で戸籍謄本が取得できました。