「あなたの決意が必要です。覚悟はありますか?」
そのように問いかけられた場面が2度ありました。
一つは、警察への相談のとき。
もう一つは、保護命令の申立てを自治体の相談員さんに強く勧められたとき。
また、家を出る覚悟があるかを自分に問いかけたときに、YESと答えられるかどうかということも、しっかり確認する必要があります。
刑事手続に乗せる覚悟
警察への相談の際に手渡された資料では、あなたの協力が必要です、と呼び掛けられています。協力とは、覚悟が出来ていることです。まだ情が残っていて、警察に動いてもらうことにためらいがある状態では、守ってもらうのは難しいということです。
加害者が一時的に反省したそぶりを見せたり、謝ったり、優しくなったりして、暴力がなくなったように見える期間があっても、再び暴力が繰り返されるようになるパターンがとても多いこと、についても注意が促されています。
また、自分さえ我慢すれば、と考えて現状にとどまることは、あなた自身はもちろんのこと、ひいてはご家族等にも危険が及ぶことになりかねない、という点をよく考えるように、ということも書かれています。
裁判手続に乗せる覚悟
かねてから相談に通っていた自治体の相談窓口の方から、保護命令の申立てをするよう勧められた際に、「保護命令を申し立てるということは、相手方がもし命令に違反した場合は、刑事罰を科されることを意味します。それだけの覚悟はありますか?まだ情が残っていて、そこまでは出来ないということはないですか?大丈夫ですか?」といったようなことを、複数の担当者さんから確認されました。それを聞いて、私はそんなに大それた恐ろしいことを、今からやろうとしているのか・・・?という気分にさせられました。
ただ、私が申立てをしてみて分かったのは、保護命令を申し立てる際の覚悟というのは、自治体の方が言うような、相手方が刑事責任に問われても構わない、という決意ではないということです。
実際に必要なのは、申立てが認められなかった場合のリスクを背負う覚悟です。
私が申立てを行った地裁では、直接いきなり裁判所へ申し立てることが出来ないようになっています。申請書類も裁判所ではもらえません。管轄の配偶者暴力相談支援センターとなっている児童相談所(兼婦人相談所)に行って手続書類をもらい、そこで説明や助言を受けながら書式を整え、及第点をもらって初めて、地方裁判所に行くことが出来ます。及第点に達するレベルの書類が出来ていても、実際通るかどうかは五分五分だ、と配偶者暴力相談支援センターの方は言います。
ここの地裁の、このようなシステムは、申立て内容が不十分なことで却下され、かえって危険な状況に置かれてしまう、という事態をなるべく回避するためなのかな、と思いました。
保護命令の申立てをすると、ほぼ相手方を刺激することになるでしょう。保護命令が決定されれば、6ヶ月間は相手方の行動が制限されますが、相手を刺激してしまったのに、もし申立てが認められなかった場合は、接近を禁止して仕返しを未然に防ぐ、といった手立てもなく、危ないのではないでしょうか。申立てが認められた場合でも、もし6ヶ月の間に確実に身の安全が確保できなければ、期限が切れた後は、やはりリスクがあると思います。
私の場合、相手方は裁判所でもあっさり自分の暴力を認め、即時抗告もなかったため、保護命令申立てによる実際のリスクは、幸い、これまでのところ発生していません。
家を出る覚悟
DVのなかでも、共依存の関係になってしまっているケースでは、被害者がせっかく一度避難しても、再び自らの意志で加害者のいる元の家へ戻ってしまうことがあるそうで、なかなか難しい問題だ、と自治体の相談員さんが教えてくれたことがあります。
今後また戻る可能性も残しつつ、一時的に取り敢えず避難するのか、それとも離婚する方向で、もう戻らない前提で家を出るのか、というスタンスの違いにもよりますが、私の場合、“家を出るときイコール訣別のとき”だと思っていたので、一時避難という選択肢はなく、一度家を出たらもう後戻りは出来ない、という覚悟が出来ていなければ、中途半端な気持ちのまま出てしまってはいけないと考えていました。
でも、実際に家を出たとき、私は、せっかく逃げたのにまた戻ってしまう人の気持ちが、少し分かったような気がしました。
いざ逃げてみると、留守電に泣き落とし攻撃や、自殺ほのめかしなどもされます。
それでも、自分はなびいて戻ってしまったりしない、と言い切れますか?