配偶者の暴力から避難することを考えておられる方に。私が子どもを連れて家を出たときのことがお役に立てば幸いです。
家を出る以前の状況
家を出るかどうか、何年にもわたって悩み続けていましたが、近いうちに出るにせよ、まだしばらくは出ないにせよ、少なくとも、あらかじめ外部の人に、どこかしかるべき機関に、家庭内のことを知っておいてもらう(DVがあることを認識しておいてもらう)ことが必要と考えました。それでも相談することを長期間ためらい続け、やっとの思いで自治体の相談窓口に電話をかけ、それから1年ほどの間、その相談室に通っていました。
引っ越しを決行したのは休日で、事前に、その翌日の朝一番に、相談室の担当者同伴で、警察の生活安全課の方と会う約束を、あらかじめ入れてありました。
引っ越し当日
引っ越し自体は無事に終わりましたが、なんと電話の着信が・・・。 とても出る勇気はなく、放置していると、「警察です。早急に折り返しお電話ください。」との留守電。 折り返しかけようものなら、所在がバレて全てが台無しになってしまうのでは、という恐怖でかけられるはずもなく、どうしよう・・・と混乱しているうちに、今度は実家から電話があり、「警察から電話があって、事情を説明したら、DVがあったのなら、とにかく一度電話をしてほしい、と指示があった。」という旨の内容でした。
それでようやく警察に電話をかけました。帰宅して私たちの引っ越しを知った相手方が、警察に行ってしまい、応対した警察の方が「DVだ!」とピンと来て、適当に話しを聞くだけ聞いて、やんわりと帰らせてくれたそうです。
「加害者が外をウロウロしている。 のこのこ警察にまでやって来ている。事態が急展開して凶悪事件に発展しやすい典型的なパターンです。万一、捜索願でも出されて受理されてしまうと、あちら主導でしか動けなくなってしまうので、あなたを助けたくても、警察としては、あなたのために動くことが出来ないんです。助ける術がなくなってしまうんです。明日の朝来られる約束になっているとは言っても、明日では遅すぎます。この数時間を争う状況です。」
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幼児もおり、もう夜遅い時間だったということもあって、その後警察のほうから私たちの引っ越し先の住まいに来て下さることになりました。
自治体と警察
証明書類の受け取り等の必要があったので、翌朝も、すでに入れてあった予約どおりの時間に、改めて警察を訪れました。その際、同行して下さっていた自治体の相談員さんが、警察の方から強い調子で注意されてしまいました。
「もともと以前から相談を受けてたんですよね?昨日動くって知ってたんですよね?事前に警察に相談もなく、いきなり動くって、それってどうなんですか?危ないですよ。相手は警察まで出向いてるんですよ?」
警察の方が席を外した隙に、「私の行動が軽率だったせいで、ご迷惑をお掛けして申し訳ない」と謝ると、相談員さんは、とんでもない、といった様子で、「私たちは、誰から何を言われようが構わないのよ。本当よ。お母さんとお子さんにさえ笑顔でいてもらえたら、私たちはどんなこと言われたって平気なのよ。」と言っておられたのが印象的でした。
これから避難される方へ
「DVという正当な理由なんだから、逃げたら世間は味方してくれるに決まっている」という思い込みだけで迂闊に家を飛び出すと、むしろあなたの側が非難される・責任を問われるリスクにもさらされます。同居義務違反に問われたり、無断で子どもを連れ去ったと訴えられるなどの可能性があります。
暴力を受けていたことがいくら事実であっても、それが事実として扱われない限りは、支援・保護などを得られない立場に置かれてしまい、”単なるあなたの一方的な身勝手”で済まされてしまう恐れがあります。危険から逃れるための行動が、逆に危険を生む事態になりかねません。
くれぐれも、細心の注意を払って、必要な準備をおろそかにせず、安全に行動していただけるよう願っております。