保護命令申立書の書き方

保護命令

保護命令申立書のひな型は地方裁判所ごとに異なります。私が申立てをした当時は、書式や記載方法に関する情報はほぼ見つからなかったのですが、段々といろいろな地裁のフォーマットを目にすることができるようになって来ているようです。
他の地裁の書式を見ると、私が申立てをした地裁とは感じがだいぶ違うな、と正直思いました。私の場合、説明や陳述のための文章をたくさん書かなければならない書式で、文章の組み立てに大変な時間を要しましたし、書面の作成のために、合計4~5回ほど配偶者暴力相談支援センターに通ったほど、申立書の作成はとてもしんどい作業だったのですが、似たような書式の地裁もあれば、「え?こんなに簡素でいいの?」と感じる地裁も結構あり、“レポート用紙に作文”みたいな感覚の書式(私の場合もこれでした)から、“必要事項を記入”程度の書式まで、いろいろのようです。

基本的な構成はどこも同じですし、注意するポイントなども似ているかと思いますので、私が申立てをした地裁の場合の記載方法等を、最も書式が近い、大阪地方裁判所の書式をもとにシェアしたいと思います。

申立書は、ボールペンを使用せず鉛筆で記載します。
また、申立書(証拠書類含む)は、2部コピーします。

申立人の住所について

申立書の写しが相手方にも送付されますので、すでに相手方と別居していて、相手方がこちらの住所を知らない場合に、わざわざここに明記してしまうと、相手方にこちらの現住所を知らせることになってしまいます。「現住所を相手に知らせないと申立てができないのなら諦めよう」と思ってしまうかもしれませんが、ここは前住所(相手方の住所)で問題ありませんでした。

申立ての趣旨について

□退去命令
□接近禁止命令
□電話等禁止命令
□子への接近禁止命令
□親族等への接近禁止命令
の5項目のうち、必要とするものにチェックを入れます。
『退去命令』は、相手方と同居している場合で、安全確保や引っ越し準備等をしたい状況や、現在一時避難中で、一度戻って荷物を運び出したい状況のときに、2ヶ月間相手方に出て行ってもらうためのもので、すでに別居していた私の場合は該当せず、チェックしませんでした。
『親族等への接近禁止命令』は、対象となる親族を記載します。実家へ危害が及ぶことを恐れた私は、両親への接近禁止命令を希望しました。対象者の氏名および、住所・勤務先・自分との関係のいずれかを書く欄があり、両親であれば、単純に《父 ○○ □□》・《母 ○○ △△》のように、自分との関係のみで大丈夫です。

申立ての理由について

第3項について

[3.私は相手方から以下のような身体に対する暴力生命等に対する脅迫を受けました。]についてです。相手側からこれまでに実際に受けた暴力や脅迫の事例を、四つまで記載することができます。四つ分すべて埋めましょう。

日付(年月日)
時間
場所
怪我の有無
怪我があった場合、怪我の内容
怪我があった場合、病院を受診したかどうか
受診した場合は入院や通院の日数
怪我があった場合、治癒までの日数

これらをすべて明らかに出来て、証拠も用意できるものを選びます。

この四つのケースをどの順番で記載するかも大事です。
・暴力の程度のひどいものから順に
・日付の新しいものから順に
証拠がしっかりしているものから順に
という基準で、取り上げる事例と記載する順序を決めてください。

暴力の内容を具体的に文章で説明する欄は、裁判官によく伝わるように、とにかく内容が具体的で、臨場感のある文章を書くよう、配偶者暴力相談支援センターの担当者の方から指導されました。「よく思い出しなさい」と、暴力を受けたときの状況を細部まで突っ込んで聞かれたり、そうやって整理した状況を文章にしても、「ここは少し分かりにくい」とか「ここはもう少し細かく説明したほうがいい」と言われて、何度もやり直しが発生しました。

例えば、“腰を強く蹴られた”のなら、右の腰なのか左なのか?それとも背中に近い位置なのか?蹴られた勢いで壁に衝突したとか、とっさにバランスを失って転んだとか、そういったことはなかったか?痛みですぐには動けなかったのではないのか?そのとき蹴られたのは1回だったのか?それとも断続的に合計4回蹴られたのか?1回蹴って、その場からいなくなったと思ったら、またすぐ戻って来てもう1回蹴られたのか?子どもの面前で蹴られたのか?等々、こちらから言わない限り、現場にいなかった他人には知り得ない状況というのがたくさんあります。
単に“腰を強く蹴られた”では、ぜんぜん暴力の内容を伝えたことになっていないということです。

第4項について

4.
□私は、今までに相手方から身体に対する暴力を受けましたが、次のような理由で相手方から更に暴力を振るわれて、私の生命、身体に重大な危害を加えられるだろうと考えています。
□私は、今までに相手方から生命等に対する脅迫を受けましたが、次のような理由で今後相手方から暴力を振るわれて、私の生命、身体に重大な危害を加えられるだろうと考えています。
の項について。

まず、□にレ点チェックを入れます。私は、暴力と脅迫のどちらも受けており、第3項の四つの具体事例でも暴力と脅迫のどちらのケースとも取り上げたので、第4項は両方にチェックを入れました。

ここは、“このままでは生命をも脅かすような大きな危害が及ぶ可能性があるから、保護命令が必要なんです”ということを、文章で理由を説明しながら訴えるところです。理由として、相手方の性格、日頃の言動、暴力を振るったり脅迫したりする理由等を書くように、と説明を受けました。
私は、第3項の四つの事例で採用できずにあぶれてしまった暴力のなかから、なるべくたくさん、ここでの説明材料に使いました。

第5項について

[5.□私は、次のような理由から、相手方に対し、申立ての趣旨記載の私と同居している子への接近禁止命令を求めます。]について。

申立ての趣旨のところで【子への接近禁止命令】を希望している場合はレ点チェックを入れ、[(2)相手方が上記の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他、私がその子に関して相手方と面会することを余儀なくされると考えるのは次のような事情があるからです。]について記入します。

子どもへの執着を示す相手方の言動などを書きます。私の場合は、相手方から逃げた後の電話やメールの内容、実家へ押しかけた際に子どもへのことづけがあったこと、実家に子どもが隠れていないか探る様子だったこと、以前の通園先に電話して行き先を聞き出そうとしていたこと、過去に子どもを取り上げる(相手方の実家で育てる)と脅されたことがあること、などを説明しました。
虐待もあったので、連れ去られると虐待の恐れがある、ということも主張しました。

第6項について

[6.□私は、次のような理由から、相手方に対し、申立ての趣旨記載の親族等への接近禁止命令を求めます。]について。

申立ての趣旨のところで【親族等への接近禁止命令】を希望している場合はレ点チェックを入れ、必要事項を記載します。

①では、申立ての趣旨のところで記載した、対象となる親族を記載します。
②では、①の親族等に対して相手方が取った“著しく粗野又は乱暴な言動”を、3つまで挙げることが出来ます。[場所]は“実家”だけで大丈夫でした。[言動の内容]は、相手方が実家へ度々電話を掛けたり、実家に押しかけたこと、門扉の所で前の道を人が通るのも構わず泣きじゃくったこと、子どもに買ったおもちゃを持ってきて、子どもに渡すよう要求し、無理矢理置いて行ったこと、等について書きました。
[□その他の事情]は、私の場合は該当なしのため、記載していません。

6項の(1)を父、(2)を母にしました。名前と続き柄以外は、(1)と(2)をすべて同じ内容で記載しました。

第7項について

[□7.私は次のとおり、配偶者暴力相談支援センターや警察に相談したり、援助や保護を求めました。]について。

保護命令を申し立てるためには、原則として、直近約1ヶ月以内の、警察もしくは配偶者暴力相談支援センターへの相談歴がないといけませんので、ここでそういった機関への相談状況について記載します。

私はどちらにも相談歴があるので、両方について書きました。
最もよく相談していた、自治体のDV相談窓口については、配偶者暴力相談支援センターではなかったので無関係でした。配偶者暴力相談支援センターには、申立てをする半年以上前にも一度行ったことがありましたが、保護命令の申立ての準備のために訪れた直近のほうのみ書けば良いとのことでした。

陳述書について

文字通り、最後に全体的な陳述をするところです。これは申立書本体ではなく、暴力や脅迫に対しての証拠書類の位置付けです(この点を、配偶者暴力相談支援センターの方は理解出来ておられませんでした…)。自由度の高い項目なので、[1 相手方が私に加えた暴力,脅迫の主なものは,申立書の申立ての理由第3項に記載したとおりです。]について、ここまでの形式的な記載では表し切れないところや、補足して是非とも伝えておきたい内容を絡めながら、状況や経緯などをしっかり説明し、保護命令の必要性を納得してもらえるような文章をよく考えましょう。

添付書類等について

証拠
申立ての理由の第3項で挙げた四件の暴力それぞれに対応する証拠(診断書、写真、メール、音声、着信履歴など)。
すべてA4の用紙にコピーや印刷をして用意します。プリンターが使える環境でなければ、コンビニの複合機で出力できるサービスを利用しましょう。
添付する証拠がもし4件あれば、各証拠ごとに、甲号証写し2、甲号証写し3、甲号証写し4、甲号証写し5、というように番号を書き込み、申立書1枚目の添付書類欄の[□甲号証写し(1~  )]にレ点を付け、(1~  )の“~”の後に5を追記します。もともと印字されている“1”は陳述書のことです。
私の場合は音声の証拠というのはなかったので、音声の場合はどのような形で提出する運用になっているのかは分かりません。

[同意書]
親族等への接近禁止命令も求めていたので、対象となる親族の同意書と本人確認資料が必要でした。専用の用紙があり、父の分と母の分と1枚づつ用意しました。

氏名(自署)[       ]
私[      ]は,裁判所が,申立人[       ]からの申立てによって,相手方に対し,相手方が私の身辺につきまとい,又は私が通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずることに同意します。

といった文面です。同意書の親族名の署名の筆跡を、親族名義のクレジットカードの署名欄の筆跡と比較して、対象となる親族の本人確認をされるので、クレジットカードの現物とクレジットカードのコピー(表裏)が必要でした。現物を預からなければならないので、クレジットカードのうち、ほぼ使用していないものを、父と母それぞれから1枚ずつ預かって持って行きました。照合が済めば、もちろん現物のカードはその場で返してもらえます。

子への接近禁止命令を求めていて、その子が15歳以上の場合は、子の同意書も要るようです。

[戸籍謄本][住民票写し]
この辺りのことは、残念ながら明確な記憶がありません。のちに家庭裁判所でも(離婚調停のため)こういった書類を提出しているのもあって、どれがどっちの話だったか分からなくなっているのもあります。
保護命令申立てのときは、地方裁判所で最初に指示された内容と、配偶者暴力相談支援センターに行ったときに指示された内容とが異なり、再度地裁に確認し直したのは覚えているのですが、それがどんな内容だったか思い出せません。裁判官が閲覧するのみで、確認後にその場で返却されたものもあったのですが、それが何の書類だったのかも覚えていません。
私の場合、婚姻関係は継続中なのに既に別居済みで住民票が別々だったのと、もともと少し特殊な事情があったのとで、すんなり指定通りには進めなかったところはあります。誰の(自分?相手方?子ども?両親?)、何が(戸籍謄本?住民票写し?他の身分関係書類?)、何枚必要なのか、個々の事情で異なってくると思いますので、事前にご自身が申立てをする地裁にしっかり確認してください。

その他

[申立手数料]
規定の額の収入印紙で納めます。申立書に収入印紙の貼付欄がありますが、自分では貼らずに持参します。

[予納郵便切手]
申立てする地裁の指定どおりの組み合わせで用意する必要があり、券種と枚数が細かく指定されています。使用しなかった分は後で返却されます。

[印鑑]
申立書の1枚目と陳述書に押印が必要です。印鑑は申立て当日も持参します。

[宣誓供述書]
申立ての理由の第7項で該当がない場合(配偶者暴力相談支援センターにも警察にもDVの相談をせずに保護命令を申し立てる場合)は宣誓供述書、いわゆるAFFIDAVITが必要ですが、果たして実務レベルでこのケースはどの程度あるのでしょうか?私が申立てをした地裁では、実質この方法は使えませんでしたし、配偶者暴力相談支援センターの担当者さんは、公証人が認証する宣誓供述書というもの自体をそもそもご存知なく、「宣誓供述書とは、この陳述書のことを言います!」と言い張って、申立書1枚目の添付書類チェック欄の宣誓供述書のところにレ点チェックを入れるよう、しつこく言われて閉口しました。この、大阪地裁の書式にも入っている陳述書は、もちろん宣誓供述書ではなく証拠書類(甲第1号証)なのですが…。

[既に発令された保護命令決定謄本]
申立ての理由の第3項に該当がある場合(過去に申立てをして保護命令が発令されたことがあり、今回は再度の申立てである場合)には、以前の保護命令決定謄本も必要です。