DVの証拠について

保護命令

実際に受けた暴力行為を、警察や裁判所に対して証明し、事実として扱ってもらうためには、証拠がどうしても必要となってきます。そのことを常に頭の片隅に置いておいて、後々のために、写真や診断書等の証拠、受けた暴力の内容や詳しい状況の記録を残すことが出来そうなときは、なるべく具体的かつ明確なかたちで残しておくように日頃から意識しておけば、自分を弱い立場に追い込むリスクを遠ざけることになると思います。
ただ、記録したものが相手方の目に触れてしまうと、かえって危険な状況を招くかもしれないので、無理のない程度に、安全な範囲ですることも大切です。

必要な情報

次のことを意識して記録するよう努めてください。

<いつ?>
年月日はもちろん、おおよその時間まで特定できないと、相手にしてもらえません・・・。

<どこで?>
例えば、「自宅で」というのは場所を示したことにはなりません。少なくとも「自宅1階のダイニング」程度までは明確である必要があります。

<詳細な状況>
・自分と相手との位置関係。
・他に誰か居たかどうか。居た場合、誰が、どこに居たか。
・何をきっかけに相手は暴力を振るったのか。
・どのような暴力を振るってきたのか。
・他の人がいた場合、その人はどのような様子だったか。
・暴力を受けた結果どうなったのか。
等々。

一例を挙げてみます。
202X年〇月△日の夜6時30分頃。
自宅1階のダイニングで。
自分はカウンターの内側で立ち仕事をしていた。
相手は食卓テーブルの一番端の席に着席していた。
カウンターの内側には子どももいて、自分の足にしがみついていた。
何か駄々をこね始めた子どもに耳を傾けていると、相手が「放っとけ!!いいから早くメシ持ってこい!」と罵倒すると同時に、手元にあったお茶の入ったグラスを投げつけてきた。
グラスは自分のおでこに命中し、シンクに落ちた。自分も一緒にいた子どももお茶をかぶった。
子どもが突然のことに驚いて大声で泣いていると、相手は「今すぐ泣き止め!泣き止まないと、顔をぐちゃぐちゃにしてやる!」と脅して、げんこつで子どもの顔面をぐりぐりと押した。

後になるほど、こういった詳細な状況についてはあやふやになりがちなので、なるべく記憶が鮮明なうちに記録しておくほうがよいです。

ちなみに、保護命令の申立書を作成するためには、受けた身体的暴力(もしくは脅迫)について、以下の情報が求められます。
・日付(年月日)
・時間
・場所
・暴力(脅迫)の内容
・怪我の有無
・怪我の内容
・病院を受診したかどうか
・受診した場合は入院や通院の日数
・治癒までの日数
・証拠

写真

写真で怪我の証明をしたい場合、怪我の部分と自分の顔の両方が同時に写っている写真を求められます。これが意外と困難です。私の場合、顔に怪我を負わされたときに撮った写真が残っていたので、その写真が自ずとこの条件を満たす結果となり、警察と裁判所のどちらでも重要な証拠となりました。日時が証明できるように、日頃からスマートフォンのカメラやデジタルカメラの設定を、タイムスタンプが表示されるようにしておくこともお勧めします。

写真については、例えば、投げ飛ばされて逆さまになった子ども用室内ジャングルジムや、食器の破片が散乱した室内や、やかんが転がった水浸しの床や、引きちぎられたコード類や、ひん曲がったUSBメモリや、げんこつの形にくっきりと凹みが出来た冷蔵庫扉や、そういった写真は持っていましたが、場所の証明が出来ず、行為者の特定が出来ず、証拠能力はない、と門前払いで、一切証拠としての出番がありませんでした。

診断書

診断書は、基本的に外すことが出来ないくらい、DVの証拠としては大事なものだと思われます。診断書がなかったにも関わらず結果的には大丈夫だった私のような例もありますが、それでも無いよりはあったほうがよりスムーズで、より確実だっただろうと感じますので、可能であれば診断書は書いてもらっておくほうが無難だと思います。

その他

[メール・SMS・LINE]・[通話録音・留守番電話]
例えば「死ね」とか「殺す」とかいった類の内容が含まれているもの等ある場合には、嫌なものではありますが、消してしまわず残しておくようにしましょう。

[着信履歴]
行動監視・脅迫・ストーカー行為を裏付けるために、着信履歴が役に立ちました。私が外出中、公共交通機関を利用中に約30分間にわたって、私の携帯電話に電話をかけて、コール音が鳴りやむまで呼び出し続け、切れたらすかさずリダイヤルするということを、50回近く連続で繰り返されたことがありました。
さっさと消してしまいたくなる着信履歴ですが、このくらいひどいようであれば、消すのを我慢して取っておいたほうが良いです。

[暴力・暴言などの現場を録音したもの]
予め録音機器がスタンバイしている状態のときに偶然暴力を受ける、というシチュエーションはあまり無いような気がするのですが、まるでルーティンのようにパターン化していることがあったりすれば、録音できるチャンスはあるかもしれません。

日記は証拠として期待できない

メディアやネットでは、日記はDVの証明にとても有効だということを、本当によく見聞きするのですが、警察に対してや、保護命令手続きに関しては、これは全く当てはまりませんでした。
私も、なるべくスマートフォンを手元に持っておいて、ツイッターを利用してメモしたりはしていたのですが、警察でも、配偶者暴力相談支援センターでも、日記は証拠には使えないの一言で終わってしまいました。
離婚調停では証拠とすることが出来るのかもしれませんが、私の場合は保護命令が発令されている状態で離婚調停を申し立てたためか、調停の際には、日記といったDVの証拠を新たに提出するという機会が一切ありませんでした。

自治体の相談窓口に定期的に通っていたので、出来事・気が付いたこと・伝えたいこと等を、スキを見てメモ帳に殴り書きしていた手書きの備忘録があったのですが、『写真』の項で言及した、顔に怪我を負った件に対応する部分と、その前後の期間のメモ書きは、警察の人からコピーさせてほしいと言われました。このメモ書き単体では使い道が無いのだと思いますが、対応する写真が存在していたり、日付がメモしてあったり、手書きだったり、というところで参考資料になったのかもしれません。

警察に相談したり、保護命令を申し立てたりするのではなく、単に離婚調停の際にDVについて主張するのであれば、証拠についての話も少し違ってくるようですので、その場合は必ずしもこの記事の内容が当てはまる訳ではなく、顔の写っていない怪我の写真や破壊された室内の様子を撮影した写真等も、役に立つ場合があるのかもしれません。